第57章 特別講師
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何で?
『恩を仇で返すな。言ってる意味、分かるよな?』
何で?
「…はい」
『とにかく次だ。何でもいいから引きずり下ろせ』
「……はい」
私はこんなに空っぽなの?
ガチャ
「やっぱりまだいた。いやぁ、参ったよ。説明にこんな時間かかるなんて」
誰を憎めばいいのか分からないから、自分を責めるしかない。
「服、直しなよ。話はそれから」
皮肉なことに、女らしい部分だけは綺麗に残っている私の体。
「……じゃあ、これ着てなよ」
渡されたのは五条先輩の上着。
前を隠すのと同時に、私は涙を零した。
「上からなんか言われた?」
全てを失った私は、自分以外の全てのものが憎くて仕方なかった。
どうしては私は独りなのに、皆は────
「…八乙女先輩なんて、大っ嫌い」
「どうして?性格?」
「そんな理由で殺すと思います?」
「人を殺していい理由ってあるの?」
「…ありますよ」
具体例を求められても分からないけれど、そうじゃないと今の現状を正しいと言い切れなくなってしまう。
「例えば?」
「五条先輩だって知ってますよね………八乙女先輩が殺されるべき理由を」
「知らないよ。教えて」
「…嘘ばっか」
先輩本人が理由なのに、何をとぼけるか。
だから別れたんでしょ?
「和田ちゃんはなんで聞いてるの?」
「言っていいんですか?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
ったく。
この人は本当に軽い性格だ。
「……先輩のお父様の不埒な行動が理由でしょ」
「おっ、ちゃんと聞いてるじゃん。てことは、相当上の人物の勅令部下だね」
本当に大人は汚いと思う。
だから、八乙女先輩には同情するけれど、八乙女先輩には死んでもらわなくては困る。
それが平穏を保つための必要条件なんだ。