第55章 こうするしかなかった
「先輩〜、こんなもの使わせないでくださいよ」
私の首に当てられるは……拳銃。
この日本で、それを持ち歩いている人は限られる。
「なっ、貴女…!!!」
「大丈夫です。先輩に怪我はさせませんから」
ダメ。
今和田さんに突っかかったら、死ぬのはお母さんたち。
「先輩。理解しました?」
「……した。だから、帰る」
「ええ、その返事を待ってました」
これでいいんだろ?
でも、私だって人間だ。
「和田さん。外に出たらどうなるか分かってる?」
「ええ。骨はやめてくださいね?」
「さぁ。私、力の調節苦手だから」
と、その時、私の携帯が音色を響かせた。
数秒の沈黙後、私は携帯を手に取り、その名を見て驚いた。
(憂太…?)
彼が旅立ってから1度も連絡を取っていないのに、何故今になって…。
「出ないんですか?」
和田さんはそれを首に密着させてくる。
出ろ、ということなのだろうか。
(和田さんには画面は見えてないはず…)
憂太に被害がいくのは避けたい。
例え戦闘になっても彼が負けることはないけれど、怪我すら負わせたくないのだ。
『あっ、繋がっ』
「YES or NOで応えろ」
『…YES』
「急を要する重要な要件ですか?」
『…NO』
「じゃあ、切る」
今は憂太と呑気に話している時間はない。
「いいんですか?」
「大丈夫。早く帰ろう」
怯える2人に声をかけず、私は玄関に向かって靴を履いた。
「ち、千夏…」
トントン、と調子を整えて。
「じゃあ。私のことは忘れてね」
また、平和に話し合いが出来なかった。
今回は私のせい。
「あ。警察とか呼んでも無駄ですからね♪では、ご馳走様でした。どれも美味しかったです」
こんなグダグダな終わり方、後悔しかないのに。
私にそれを償うチャンスはなさそうだ。
「こんな平和な住宅街に、こんな物騒な武器……似合わないですね〜」
背中に銃を当てられたまま、私達は仲良く歩く。
「先輩、泣いてます?」
どうする?
私なら何だってでき────
”それをするなら…千夏が、それを言うなら、僕は敵になってみせる”