第52章 不如意
「って、ちょっと待て。あそこにいた人間なんて、僕ら以外にいないはずだ」
平日の昼間。
僕達は学校をサボって公園にいたのだから、人目につかないような場所で遊ぶ工夫くらいしていた。
「よーーーく、思い出して」
よーーーーー…く。
「いや、いないって」
学校に行かないと家に電話がいくことは知っていたけれど(少なくとも僕は)、それでも────
”坊ちゃん!”
「ん?思い出した?」
は?
「まさかまさかだよねぇ。ショック?」
”何してるんですか!もう…心配させないでくださいな…”
「…成程?お前が消える直前に、ギリギリ…」
「きゃはっ!五条悟が動揺してるぅ!」
「静かにしろ」
呪霊の口を塞いでみたが、胸の奥のざわつきは止まらない。
「〜〜〜(言っとくけど)」
「何」
手をどかすと、呪霊はわざとらしく呼吸をする。
「言っとくけど、並大抵の感情じゃないからね。ひとりの人間が抱えるような…」
「わかってる。千夏と一緒にすんな」
「きゃは…、しっつれぇい!」
1度落ち着こう。
これはあくまで仮説で…
「…もういい。次の話題に移ろう」
ダメだ。
1度生まれた疑念は消えてくれない。
”坊ちゃん”
今回問題となっているのは、人ひとりが抱えるような負の感情ではない。
けれど、もしひとりの人間から生まれたとするならば、その感情は当たり前に並大抵のものでは無い。
つまり。
”坊ちゃん”
初枝さんは何らかの理由で、千夏を心から…心の底から恨んでいたこととなる。
(…なんで?)
千夏との仲を認めてくれたではないか。
実の親よりも、僕のことを心配し、考えてくれたではないか。
どうして初枝さんは、そこまで千夏を恨んで…
「次?何が聞きたいの?」
「どうしてお前が沖縄にいるのか教えろ」