第51章 コイワズライ
慰安室に戻ると、私は夏油先輩とすれ違うだろう。
軽く肩をポンと叩かれただけだったけれど、少し気持ちが軽くなったのを覚えている。
問題はその後だ。
部屋の中には七海先輩の他に、八乙女先輩もいて。
何だか部屋に入りにくくて、ドア前でしばらく入るか悩むことになる。
「…七海ちゃんは頭がいいし、強い」
「嫌味ですか」
「違う。本当にそうなんだよ。七海ちゃんは頭が良くて、強い」
この時の私は責任から逃れる方法を探していた。
自分は悪くない、と思いたかったのだ。
けれど。
「こんな状況になったのに…?」
「それは運が悪かっただけ」
八乙女先輩は遠回しに私を責めた。
八乙女先輩にそんな魂胆があったとは思えないけれど、漏れてくる会話が私の心を抉る。
「灰原は、運のせいで死んだって言いたいんですか!?」
「…そう」
「神に死を決められたと…!?」
「だって、七海ちゃんと灰原は弱くないもん」
私は耐えられなかった。
だから、逃げた。
「ウルハっち…!」
クラスメイトの声からも逃げた。
「鈴木さん、いる〜?」
先輩の優しさからも逃げた。
灰原先輩を殺した私は────
全てから逃げた。
(もう1回、あの絶望を味わおうとは思わないな…)
先輩の言葉は一言一句、しっかりと胸に刻まれている。
今更復習する必要は無い。
何年も後悔し、深く反省もしている。
だから、あのサイコロはタンスの奥にしまったし、呪術師という職業から足を洗った。
再び戦おうとしてしまったから……
ならば、私はここに来なければよかったのか?
七海先輩の頼みを断れば良かったのか?