第50章 熱源
「そこ。宝箱隠れてますよ」
「え……ああ!ほんとだ!」
どうやら、八乙女先輩はかなり特殊な人のようで、入学当初から特級呪術師としての才能を持ち、その象徴となる彼女の白い制服はかなり目立つ。
その強さを利用するように任務が立て続けに来るらしいけれど、何故かその疲れを癒すことよりも私の部屋に来てこうしてゲームをすることを優先する。
…こんな真夜中に。
休まなくていいのかと聞くと「ゲームがしたい」と言われ、顔が疲れてると指摘すれば「私、疲れてる方が可愛いって言われるから」と可愛いと言わなくてはならない状況になる。
「じゃあまたいつか来るわ。おやすみー」
そして、飽きたら自分のタイミングで帰る。
逆に、飽きなければいつまでも自室に戻らないのだけれど、今まで先輩の身勝手さにうんざりしたことは無い。
…他の先輩方はかなり迷惑しているらしいけど。
と、まぁ。
私と先輩はこのようにして仲良くなった。
先輩の前では無理に話さなくていいし、とりあえず一緒にいて楽だった。
きっと先輩もそう思ってくれていたのだろう。
しかし、梅雨が過ぎ、新緑の季節が過ぎ…
徐々に先輩は私の部屋に来なくなった。
理由は先輩が忙しくなったから。
家入先輩達でも会えないと言っていたから、まぁ仕方がない。
ゲームの相手はいなくなったけれど、元々1人用のゲームだ。
オフラインでも充分に遊べる。
それからはまぁ…色々あって…。
(…はぁ)
私はサイコロが地面に落ちた瞬間を見つめて、心の中でため息をついた。
その色々は、本当に言葉の通りで。
思い出すのも面倒だった。
というか、思い出したくもなかった。
思い出さないように努力していた。
結論として、その色々の結果、私と先輩はとても仲が悪くなった。
私は絶交を申し付け、先輩は を嘲笑ったのだ。
(ああ、何だか…体が軽くなったな)
致命的だった傷が塞がっていく。
患部だけが妙に熱かった。
「ウルハ…大丈夫!?」
ムカつく。
この顔が大嫌いだった。
でも
この場で唯一先輩の未来を知る私は、そんな顔を見るのも最後だと────
無力な自分を呪った。