第50章 熱源
私は昔から運が良かった
テストの山は大抵当たるし、くじ引きでは3等以下を取ったことがない
そして、私は運が悪かった
電車を直前で逃したり、雨に降られたりすることも多かった
けれど、全体的に見たら運を味方につけていたはず
そりゃあ、自分で運の使い道を選べるのだから、圧倒的に勝ち組だった
けれど、その力が人の命を奪う可能性を知った時、私は自分がとても怖くなった
「ねぇ、───ちゃん。やっぱり領域解きたい!」
「えー、何でよォ」
「ソイツは憎いよ?憎いけど…殺したら私も同じになっちゃう」
「いいじゃん。人間ってみんなそんなものでしょ?」
私が投げた武器が効果覿面
先輩はすぐに態度を改めて、あのクソ呪霊の話を無視して領域を解いた
「うわ、久しぶりの空だわ…」
なんとかいうピンク髪の男の子が喜びの声を露にした
薄暗かった領域内から脱出できたのは…
(2日か…)
携帯の時刻は信用ならないために、ショッピングモールの大時計を確認
思っていたより時間が経っていたみたい
プップー
「おめーら、道の真ん中で何やってんだ!」
うっせーな、クソジジイ…こっちだってわけアリなんだよ!
なんて、ことは言える訳もなく…
私達はイラつきながらも道端に避けた
(そもそも、人気のないところで展開しろって…)
先輩に対する愚痴は留まることを知らないが、今はそれに対応する時間ではない
「先輩、ソレ…返してください」
「…うん」
あーあ。また不安定になってる
八乙女先輩は昔からよく分からないタイミングで落ち込んだり、喚き散らかしたりする人だったけれど、今となってはその原因は全て似たようなものだったのだと思う
……っと。