第6章 変わらない優しさ
そんな事があって、こうして暇を持て余しているわけだが。
その間には本当に色濃いことが沢山あった。
「おっ。遅かったな」
「自販機、全部売り切れてたから、コンビニまで行ってた」
傑からお茶を受け取り、喉を潤す。
「千夏、どうだって?」
「あー、なんか、色々と…」
任務の進捗を報告した数分後、ボケが始まった先生から連絡があった。
千夏が術式を使ったであろうことと、千夏が泣いていたこと。
主にその2点だった。
変態教師に成り下がったかと思ったが、ある程度の信頼は寄せている。
その可能性は低いだろう。
その次に、硝子から連絡があった。
千夏が泣いていたことと、千夏から嫌な雰囲気が漂っていたこと。
そして、俺は千夏に電話をかけたわけだが。
それがなんと繋がらなかった。
「今は硝子といるってよ」
「なら安心だな」
「どこが」
千夏が泣くなんて、余程のことだ。
昔の千夏はよく泣いていたから、泣くなんて普通だ、とかそんな単純な話ではない。
”昔の千夏”になったことが大きな問題なのだ。
「『高専、消滅!』とかいうニュースでてないよな」
「そんなことあったら、この世は終わりだ」
「だよなー」
「第一、そんなこと出来るやつなんかいないだろ」
「やろうと思えば、俺らならできるよ。最強だから」
そして、千夏にも。
その一言は心の中で呟いた。
硝子が感じた嫌な雰囲気が、本当に千夏から感じたのならば。
今、千夏に大きな衝撃を与えることは、核爆弾の発射スイッチを押すくらい危険な事だ。
「そんなに心配なら今から帰るか?」
「心配してるように見えた?」
「いつにもなく真剣な顔だった」
「ふん。俺はいつでも真剣だっつーの」
俺の存在で守れるものは全て守る。
俺の力不足が故に後悔はしたくない。
だから、千夏に我慢をしてもらっている。
俺が、俺らが本物の最強になるまで。
あと少し。
あと少し。
耐えろ、千夏。