第48章 緊急事態
「八乙女さん」
右耳に恵の電話が当てられて、学長の声に混じって悟の声が増えた。
『それにだ。お前が任務に行ってる…』
『やあ。今沖縄なんだって?』
「うん。みんな一緒」
『は?聞いてるか、千夏』
『学長、めっちゃ怒ってたよ』
「うん、今電話中なの」
『…それでだな。えっと、何の話を…』
『でも、ナイス千夏っ!若人から青春は奪えないからね』
「だよね!私もそう思う!」
『…誰と話してるんだ?』
『流石だよー!学長なら僕が宥めておくから、楽しんでおいで』
「流石、理解のある担任!ありがと!」
『まさか、悟か?悟なのか?』
『このナイスガイに任せなさいっ!じゃーね』
「はーい」
なんかうるさい声もあったけれど、とりあえず学長問題は解決した。
「じゃあ、学長。私、急いでるから」
『おい、千夏!まさか、悟と結託して…』
「処罰、文句等は悟に任せました!それじゃあ、アデュー!」
『…待ってくれ』
待たない。
ブチッと電話を切ると、隣では恵が大変な顔をしていた。
「相手、学長ですよね」
「うん」
「…いいんですか」
「うん。悟が全部怒られてくれるって」
というわけで。
私達もようやくショッピングを始めることができ、「沖縄といえば」というヤツや、「流行りの〇〇」というヤツを次々に購入し、味わい、荷物を増やしていった。
「皆、いないね。どこ行ってんだろ」
「…さぁ」
次の場所に行きたくなったら連絡して、と言ってあるから、皆この通りにいるはずなのだけれど、未だに1度も見かけていない。
「一応、私が調べたところは全部行ったんだけど…。皆、まだ飽きないのかな」
「…あの、八乙女さん」
私が強引に着せた漢字Tシャツを大人しく身に付けている恵は、眉を8の字にしてこう言った。
「皆、夜まで帰ってきません」