第48章 緊急事態
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「うわ…。こんなところまできて筋トレすんのか?」
「私が何しようといいでしょ。皆のところに行け」
「俺、海苦手なんだよなぁ」
おっこらせ、と隣にやってきたパンダ。
あちらは海が苦手かもしれないが、私が苦手なのはお前なんだよ。
そう言いたくなる気持ちを全く抑えずに、全面的に態度で示す。
「悟と別れたんだってな。おつ」
「あ?それ言いに来たって?」
「言葉使い直したんじゃねーの?」
「うるさい」
そういえば、どうしてパンダが嫌いになったんだっけ。
「遂に悟も女を見る目を手に入れたんだなー」
あ、そうそう。
普通に性格が無理だったんだ。
「悟は私の事好きだもん」
「…普通に考えて、こんだけひとりの女が好きだなんて有り得なすぎだし。まして、その女が千夏とか…」
「え、さっきから何?マジでイラつくんだけど」
「わざとに決まってんだろ。本気でこんなこと思ってねーよ」
…絶対嘘。
「おい、パンダ!こっち来いよ」
「呼ばれてるよ」
「…仕方ねーな。お前も来る?」
「子供は子供で遊んでなさい」
「え…こ、れが……おと…な?」
「黙れ」
うるさいやつもいなくなり、平和な時間を過ごして数十分。
遊び飽きたお子様共が戻ってきて、私達はショッピングに向かった。
国際通りとかいう観光名所に来たのはいいけれど、ついた途端に皆各々に行動し始めた。
残されたのは私と恵。
「今なら間に合うよ、ほらダーッ…」
「こうなったら1人で回ります」「シュ」
あれ。
なんか恵が不機嫌。
「ど、どーしたの。どっか行きたい場所とかあった?」
今回の目標は、数年後に思い出して思わずにやけてしまうような思い出作り。
一部の人間だけでなく、皆がそう思えるような旅行にしたい。
「…八乙女さん」
「はいはい、何でしょー」
「一緒に回りませんか」
「…え、皆は?」
「勝手に動くから疲れます」
「私も似たような…感じでは?」
「まぁ…。でも…アイツらと話すよりマシです」
そ、そうか?
でも、あの子達のことを思い出したであろう恵の顔は、ここ数時間でいちばん酷いものだったし…。
「じゃあ行こ」
「ありがとうございます」