第48章 緊急事態
そんなこんなで旅行に行くことになった私達は…。
「何で人数増えてんの…!?」
朝7時。
最寄りの駅に集合、という約束だったのだけれど、明らかに人数がおかしい。
「だって、1年だけサボりってずるいじゃん?」
と、でっかいぬいぐるみが主張。
「先輩らしく見送れないんかい…!この、白黒パンダめ…」
「座席とか自分らで取ったし、問題ねーだろ?」
いや、問題ありまくり。
か・な・り!
まずい。
「そのさ、1年は担任が悟だからどうにかなると思ったけど…あんたたちは管轄外!」
「大丈夫ですよ、千夏さん。私らの担任も緩いんで」
「違っ…あぁ…もう」
もういい、もういい。
みんな揃って旅行しようか、ね?そうしよう。
と、私たちはかなりの存在感でスタートダッシュを決めた。
ところで、どうしてこんなにも人数が増えたのか。
その答えのキーパーソンは……
伏黒恵であった。
遡ること昨夜。
「貸しかぁ…それはいいな」
「しゃけ」
俺が連絡したとき、たまたま2年は同じ場所にいて。
面倒だったから、俺もその場に行くことにした。
「ところで…ちょっと気になってたんだけどよ」
そのせいで、変な話題に発展することとなる。
「恵って千夏のこと好きなの?」
「はあ?」
「あーだからか。なるほどな。悟のやつと別れて今、ってか」
「すじこ」
「違いますよ」
「照れてる~キモ」
「…やめてください」
俺が”あの”八乙女さんに恋をしているだと?
冗談だとしてもかなり酷い冗談だ。
「とにかく、お願いしますね」
「ちょい待て」
パンダ先輩が自分を指さして言う。
「俺らも行くわ」
「…」
「そんな嫌そうな顔すんなよ~。二人の時間は作ってやるからよ」
2人、か。
病院での会話が思い起こされ、何故俺はあんなことを口走ったのだろうかと不思議な現象に首をかしげる。
当初の俺は2人で出かけることを前提としていたが、それを指摘されてあんなにうろたえるなんて。
二人で出かけることくらい、今までいくらでもしてきたのに。
(なんでだ?)
そんなことを考えている内に、旅行の人数が増えていた。