第45章 酒の力
「そんなことしてない…から!」
「…ふぅん」
「離れてよ」
「嫌」
痛む腕を無理やり動かされて、壁際に追い詰められた。
「”俺”のこと忘れて男遊び?それとも、マジな方?」
「どっちでもない」
これはまずい。
悟が悟じゃない。
酒のせいで感情が暴走している。
「…別に、千夏が誰かと幸せになりたいって言うなら応援するよ」
悟の目がギラギラとしている。
「でも、俺は絶対に諦めねーから」
ギリギリと締め付けられていた腕が解放されて、思わずもう片方の手で労わってしまった。
嫉妬してくれているのは嬉しいけれど、完全な勘違いに困り果てる私。
けれど、目の前にはもっと困る状況が…。
「ね、ねぇ、何してんの…」
「ん?」
場に似合わない少年のような笑顔に、思わず唾を飲み込む。
悟はズボンを脱いで、下着の上から自身のモノを握っては動かしていた。
「や、やだよ…?」
首をゆっくりと振りながら困ったような顔をすれば、悟は悲しそうに眉をひそめて、次の瞬間には小さく喉を鳴らして笑った。
「…嫌われちゃったなぁ」
「嫌いじゃないよ。ちょっと…怖い」
怖い、という単語に、悟は一瞬動きをとめた。
しかし、同時に悟の何かを刺激してしまったようで、彼は下着を脱ぎ去って、私の下着に手をかけた。
「嫌だってば!」
「確かめるだけ」
「何、それ…っ!」
その手から逃れようとすれば体は痛むし、この抵抗を止めたらきっと好き勝手にされる。
そんな拮抗の結果、私はその場に座り込んで篭城した。
しかし、彼は酒に酔い、理性というものを無くしている。
私の足を持って引っ張れば、私の体は簡単に動いてしまい、そのまま後ろに押し倒された。
「やっ…だ…!やめ、てよ…」
「千夏…」