第42章 ばいばい
「…悟」
「もう大丈夫?」
「うん。悟の目で…今、千春はここにいる?」
「いるよ」
よかった。
千春は消えた訳では無い。
けれど、疑問は残る。
何故、千春は戦闘不能に?
頭を働かせろ。
人より馬鹿な分、沢山動かせ。
昔、千春が見せてくれた。
『最初は液体だったけど、衝撃を与えると…氷のようにガチガチになる。触ってみな?……ほら、冷たいだろ?』
水が氷になるような。
すなわち…えっと、凝固だっけ。
その状態変化はタダでは起こらない。
変化にあたって前後でエネルギーの差があり、そのエネルギーを周りの熱から吸収するから、周りがひんやりとするのだと。
私が発見された時、周りには霜が降るほど冷えた空気があった。
つまり、私があの状態になる上でエネルギが必要であったことが伺える。
私が限界で弱っていたから、もしくは千春が限界だったから、エネルギーを熱から奪う必要があったのでは?
別に間違っててもいい。
仮説でいいんだ。
では、最初の衝撃は?
私の記憶に残る最後の顔。
千春は私が自分の力で身を守ることができなくなったら出てくる。
つまり、私が倒れた後にその衝撃はあった。
その場にいたのは傑と呪霊。
気配から2人以外には誰もいなかった。
つまり、この2人のどちらかだ。
傑が私に攻撃をするなんてありえないけれど、可能性として考慮しなくてはならない。
そう千春に教えられたから。
もし、呪霊の術式が千春を戦闘不能にしたのなら。
それは呪術界を脅かす戦力になりうることを示し、速急にその旨を伝える必要がある。
……もし、傑の術式が千春を戦闘不能にしたのなら。
もっと前に千春が危機を覚えてもいいはずだ。
千春は私のために情報を隠匿するような優しい姉ではない。
呪霊操術が千春の存在を脅かすようなら、そのことを私が聞いているはずだ。
そうか。
傑が私を守るために、何かをした可能性もある。
術式を使わない呪力そのものくらい、私は不意をつかれても防げる自信がある。
だから、タネがあるのは術式の可能性が高い。
傑の術式は一通り知っているつもりだったけれど、もしかしたらまだ知らない部分があるのかもしれない。