第42章 ばいばい
「千夏…」
「やだ…!」
耳を塞いで悟から距離をとる。
1歩近づいてくれば、1歩下がって。
「秘密は言えないし、悟にはそれを認めて欲しいし、悟に隣にいて欲しいし……わがままだって知ってるけど…」
これが私の希望だった。
「泣くなよ…」
「そんな、ずるいこと…言わないで…」
徐々に距離が詰まって。
私はその場に座り込んだ。
「…私のこと、嫌いになった?」
こんな重い女になりたくなかった。
悟に重いと思われたくなかった。
でも、どうしても聞きたくなった。
「嫌いになるわけないじゃん」
悟が乱れた髪を直してくれた。
そして、私の疑問を否定形で答えてくれた。
「じゃあなんで避けるの…」
「避けてない」
「避けてるよ」
連絡もしてくれないし、家にも帰ってこない。
私が声をかけても軽く挨拶するだけ。
それでよく”避けていない”なんて言えたものだ。
「今日だって家まで行かなかったら、絶対に会ってくれなかったでしょ…?」
「それは…」
口ごもるのが答えではないか。
「…さとる、も。ちはる、も。ひどいよ…。なんのせつめいなしに、いなくなっちゃうんだもん」
「千春?喧嘩したの?」
「いないの。よんでも、どくをからだにいれても。はんのうないし、とめてくれない」
ちはるがいない。
そのじじつが、さとるにさけられたじきとかぶって。
いっしゅうまわって、かんじょうがえらーをおこしていたのが。
いまになってぼうそうしはじめた。
てはふるえ。
ちのけがひく。
わたしは、ちはるがいないと。
いきていけない。