第41章 蝶蝶喃喃
こうして目が覚めるのは何度目だろう。
きっと簡単に数え上げられる気がする。
誰かに手を握ってもらうなんて、私にとってあまりにも幸せなことだから。
「あれ、歌姫?」
顔の傷に大きなリボン。
「硝子ー!千夏、目覚めたよ」
「お、流石。早いね」
硝子もいる。
「気分は?」
2人に顔をのぞき込まれた私は、感じるまま頭が痛いと答えた。
「そりゃあねぇ…。やっぱりタフだわ、あんた」
「…褒められてる?」
「褒めてる褒めてる」
いてて、と頭を押さえれば、今度は唇に乾いた痛みが。
「ふぃっひゅ」
「あー、はいはい」
何だこの傷。
深っ!
血が止まらないし、かさぶたであろう塊が口の中に入ってきた。
「ひは、はんじ?(今、何時?)」
「時間?2時半だよ」
私が最後に時計を確認したときには、短針は9を指していた。
しかし、それは悟が来てくれる前のこと。
色々考慮すると、私が意識を失ってから1時間が経過したところだろう。
「…」「…」
「ふぁひ?(何?)」
歌姫と硝子が呆れたような面持ちで、じっと見てくる。
「”五条は?”って聞かないの?」
聞かない、というか。
「…大体分かる、からさ」
ティッシュの扱いにもなれ、喋りやすい方法を見つけた。
それと同時に、自分が置かれている状態を飲み込む。
あっちも察してくれたのか、言葉の代わりに缶詰フルーツの盛り合わせを差し出してくれた。
(きっと、甘えすぎたんだろうな…)
そんなことを考えながらみかんを口に入れた。
みかん汁の傷に染みること、染みること。
「…2人から見て、私って悟に甘え過ぎてたと思う?」
歌姫は悟の事が結構本気で嫌いだからか、自分には関係ないという顔で、パイナップルにフォークを刺した。