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【呪術廻戦】infinity

第37章 ユートピア



「…」

「…」

「…で、も。勝手に家に入ってくるのは…」

「何かな」

「いえ!なんでもございません!」



偵察カラスに気づかなかった私も悪いけれど、冥冥さんも中々常識外れなことをする。



「そんなに私が怖いかい?」



冥冥さんが私の頬をスルッと撫でた。



「いえ!全く怖くないです!とっても、美しくて…!それはもう!」

「じゃあ、この涙の説明が欲しいね」



冥冥さんが耳元で囁いてくる。

それがもう、居心地が悪くて。

冥冥さんの機嫌の悪さが体現されていた。



「特に何も。はい。普通に、泣いていただけというか」

「普通、とは」

「ちょーっと、泣きたくなったというか。はい」

「…なるほど」



本当に納得したかどうかは知らない。

どうでもよかった。

冥冥さんが離れてくれただけで万々歳だから。



「千夏、仕事だよ」

「はぃ…えぇ!?」

「大丈夫。東京だから」



初めから拒否権がないことは分かっているが、いくらなんでも急すぎる。

私がほかの仕事に当たっていたら、どうしていたのだろうか。



「置いていくよ」

「ちょ、少しだけ準備させてよ。私、ワンピース着てんだけど!」

「…1分」

「り、了解!」



こうやって、冥冥さんにパシられるのは初めてではないし、もう慣れた。

でも、いつまで続くのだろうか。

少しだけ、ほんの少ーし、辛いのだけれど…。



「お待たせ致しました…」

「髪はまとめなくていいのかい?」

「移動中にする」



私の返事に満足したようで、冥冥さんは微笑んだ。

そして、すぐに家を出た。


(えぇ。冥冥さん、土足…)


帰ってきたら拭き掃除をしなければ…。

冥冥さん相手だと不満のひとつも言えないから、少しだけ、ほんの少ーし、疲れる。

まぁ、その分わがままは沢山言うようにしているから、差し引き0だろう。



「ねぇねぇ、なんの仕事?」

「千夏が好きなやつ」

「ほんと!?」



とまぁ、不満は沢山あるけれど。

私はこの時間が好きだった。

失いたくない時間のひとつだった。



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