第34章 諦め半分、夢半分
1日目。
北海道札幌市。
『遊んでないよな』
「もちもち。ちゃーんと働いてますっ」
1時間に1回という、超スーパー頻度での進捗報告兼監視。
「おーい。こっちとこっち、どっちの洋服が似合ってる?」
『おい』
「あ、右のほうが似合ってるよ!」
『お前らなぁ…』
「じゃーね。ちなみに、北海道の結界確認は終わったから、これから中東に移動しまーす」
携帯をポケットにしまって、服を選んでいる悟に近づく。
北海道の産物がプリントされたシャツを片っ端から試してるみたい。
安物だからと始めは嫌がっていたけど、私が”お揃いにしよーね”といったら、全力で選び始めた。
「このクマのやつ、可愛くない?」
「前から思ってたけど、千夏のセンスって斜め上いってるよね」
私が手に取ったのは、真ん中にでかでかとリアルなクマが描かれている半袖シャツ。
がおーっと叫んでいるようで、今にも飛び出してきそう。
「この前買ったワンピースも、個性的だし」
「え。アレは可愛いでしょ」
「そーだね(棒)」
結局、クマの半袖シャツは却下され、海産物のキャラクターが散りばめられたシャツをサイズ違いで購入した。
着て帰るか聞かれたが、流石にそれで飛行機に乗るのは恥ずかしいので遠慮した。
でも、今着ている任務用の服は、耐久性と引き換えに通気性を失っているので、普通の服に着替えたい。
本来はそういう目的で使うのは悪いことだけれど、悟のイケメンパワーで女性店員を懐に入れ、試着室を使わせてもらえることになった。
丈の短いチューブトップに防寒性0のだぼだぼ上着を羽織って。
短パンに大きめのサングラス。
「わーお。過激な格好だね」
そういう悟はラフなシャツにパンツを組み合わせた、いつもと変わらない格好。
けれど、いつもと違う点があって。
シャツのボタンが開放的になってる。
「前は清楚系だったから、今日はこういう系統で。どっちが好き?」
「どっちも好きだけど、ちょいと肌が見えすぎなのでは?」
「悟がいるでしょ」
「…まぁいいや」
悟の手を握り、腕を絡めた。
歩きにくいけれど、こうやって歩くのが好き。
悟も暑苦しーとぼやきながら、満更でもなさそうだ。