第31章 大人になれない大人(仮)
『うわ。千夏、嫌われてんじゃん』
「…あんなことしたらねぇ」
『何したの?』
「んー…。村の東側にある森を半壊させた」
『それは嫌われるね』
野薔薇に疎まれる一番の原因は他にあるが、その件で村の人に嫌われまくり。
『じゃあ、僕達迎えに行っちゃうからねー』
「…はぁ、感動の再会になると思ってたのにぃ」
『ドンマイ!そういえば、1人で京都に?』
「ううん、それは…」
硝子といるよ、と言おうとしたところで、横にいる人に電話を奪われた。
「電話長い。デートの邪魔すんな」
そして、切られた。
「ちょ…!」
「長すぎ」
画面が暗くなった携帯を返され、道の真ん中で硝子を罵倒する。
「面倒。早くいくよ」
「もー!」
この怒りの正体は、硝子に向けてではない。
あの我儘娘、釘崎野薔薇に向けてだ。
私なりに可愛がったつもりだと言うのに。
あの子が東京に来れるように、まあまあ手を貸したというのに。
自分では嫌われる要素がないと思うが(性格以外で)。
「うわっ。学長から連絡止まらない!」
「…五条のやつ、チクったな」
「硝子のほうに連絡すればいいのに」
「無駄だと思ったんでしょ」
硝子が見せてくれた画面には、50件を超える通知が。
60…70…。
通知がどんどん増えていき、その相手は学長に限ったものではない。
「映画みたい♪」
「あんたのその能天気さ。やっぱりすごいよ」
「ははっ。だって、どーせ怒られるなら、ハッピーでいようよ。硝子は変なところでまじめすぎるんだよ。今も昔も」
学長に私達の自撮りと可愛いスタンプを送って、携帯の電源を切った。
自分の映りを気にする一方で、こんな大人になってまで自由奔放を貫くのはいかがなものかと、初めて気にした。