第31章 大人になれない大人(仮)
36.8℃まで体温が下がった私。
そして、包帯ぐるぐる巻の恵。
「あーーもーー!」
「静かにしてください」
私達は病院に置いてかれた。
悠仁の荷物をまとめてくると言って、2人はあっさり帰ってしまった。
「いや、分かるよ?悟が悠仁に付きっきりになる理由は、分かってる。でもさぁ…」
「それ言うの4回目ですよ」
「数えてたの?」
「…俺は静かにしてくださいと12回も言いました」
悟と喧嘩していたせいで、1週間は楽しい話をしていない。
少しは話せるかなと思っていたのに。
悟を悠仁に取られた。
それに、恵は本を読んでいると言って、話相手になってくれないし。
つまらない。
「ねーー、めーぐー…」
「うるさい」
「あっ、年上に向かって何という…」
「…!」
すごい剣幕で口前に指を立てた恵。
申し訳なく思う一方で、不貞腐れる自分がいた。
結局、残りの時間は寝て過ごし、悟たちが戻ってくると、呆気なく私達は退院した。
頭がぼおっとしている間に空港につき、導かれるまま席に腰を下ろした。
「んー、まだ熱っぽいね」
悟の大きな手が私の額に触れる。
「寝ていいよ」
「…やだ」
係の人からりんごジュースを貰い、チビチビと口付ける。
「不貞腐れてんの?」
「んーん」
「あー、分かった。僕がいなくて寂しかったんだ」
「そうじゃないです」
「照れるなよ〜」
ここが家だったら、今すぐ抱きつきたいけれど、公共の場でイチャつくほど常識がないわけではない。
「東京戻ったらさ…、忙しくなるでしょ?」
「そーだね。悠仁の件もあるし、出張もあるから」
「…私との時間はいつ取れるの?」
「あー、ほらやっぱり、寂しかったんじゃん。ちょっと待ってね…」
悟が指をおりながら、一日づつ確認する。
悟は適当な人間だけど、大事な予定は絶対に忘れない。
…遅刻はするけれど。
「…あはっ!」
「…」
「そんな顔しないで。絶対時間作るから!」
「別に無理して時間作らなくていい」
本音だけど、本音じゃない。
「その代わり、繁忙期終わったら、お泊まりデートしよ」
「…ごめんね」
「っていうか、私も私で忙しいからお互い様!」
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