第30章 疲れとストレス
場所は宮城県仙台市。
一般の学校に宿儺の指が保管されているなんて、ふざけてるとしか思えない。
逆に言えば、宿儺の指を置かないといけない理由があるということだけれど、それでもふざけてるとしか思えない。
呪物を置かなくてはならない原因を排除するのが先だろ、と誰かに言いたくなった。
「それで。この高校のどこに指があるの?」
一般の高校に入るのは初めてで、少し緊張している。
いい大人だというのに、恥ずかしい限りだ。
「高校に着いた連絡しろって言われたので、電話かけます」
「…誰に?」
「五条先生です」
私の顔が引き攣ったことを見て、恵は少し離れたところに移動して、電話をかけ始めた。
私の顔が引き攣ったのは、もちろん悟の名前が出たから。
1時間前に”今夜話せる?”と送ったものの、返信が無い。
いつも任務時以外は返信が早いというのに。
故意的なものを感じずにはいられなかった。
そんな中でも、任務は任務。
恵が電話をしている間に、守衛さんの元へ向かった。
事前に高専から説明があったので、あっさりと許可を貰えた。
「はい。そーですね。平和っすよ」
電話中の恵に手招きした。
校庭を突っ切り、雑草が生い茂るエリアにたどり着き、独特の匂いがした。
「百葉箱!?そんな所に特級呪物を保管するとか、馬鹿すぎるでしょ」
恵が最もらしいことを言い、奥に見える白いものを指さした。
教養がないため、あれが何なのか分からないが、話からするにあれが百葉箱なのだろう。
小学生の時に名前を聞いたことがあるが、実際に見るのは初めてだった。
これは学校をサボっていた私が悪い。
恵を追い抜かし、通話する恵の代わりに百葉箱の扉を開けた。
中には温度計が1本ぶら下がっていた。
それ以外は何も無い。
「…ないですよ。百葉箱、空っぽです」
恵は私に疑いの目を向けた。
私が呪物を隠したと思っているみたいだ。
心外だとサイレントで怒ると、恵のおでこに血管が浮かんだ。
何故恵が怒るのか不思議に思ったが、すぐに電話先にいる相手が原因だろうと気づいた。
「…ぶん殴りますよ」
一体何を言われたのだろうか。
想像もつかない。