第26章 三度目のクリスマスプレゼント
「らぁぶらぶぅ〜」
そんな声にハッとなり、顔を上げると彼は悲しそうに笑っていた。
周りには呪術高専1年フルメンバー。
パンダがニヤついて指さしてくる。
「あの、千夏さん。私たちのこと、助けてくれてありがとうございました」
「明太子」
「僕の力不足を補ってくれて、ありがとうございました」
三人そろって頭を下げて、真希が一歩前に出た。
「それと…、今度稽古つけてくれませんか。強くなりたいんです」
”強くなりたい”
以前、私も口にしたことのある言葉だった。
私たちが子供の頃、大人はとっても遠い存在に思えて。
いつの間にか体も、精神も少しずつ成長していて、私達がその大人の立場に立たなくてはいけない時が来た。
泣いている時間はない。
「うん、いいよ。ケガが完璧に治って、私が戻ってきたら始めようか」
「ありがとうございます」
嬉しそうな表情をする真希と反対に、顔をしかめた男が一人。
「い、いいじゃん。放浪癖があるのは許してよ。千佳さんのお兄さんに報告しないと。悟も来る?」
「そんな暇じゃないんですっ」
「それなら、七海ちゃんでも連れて…」
「ダメ。それは許さない」
「えー。あんなところに一人で行くのは…」
一つ。
思い出した。
「ねえ、君たち何年生まれ!?」
「え…。2001年ですけど」
つまり、あの子の一個上。
「きゃあ、大変。ねえ、悟、大変だよ」
「落ち着こうね。みんなビビッてるから」
驚かせるつもりはない。
深呼吸して、悟の腕をつかんだ。
「来年は楽しくなるよ」
「どうして?」
「あの子が入学するから」
「あの子?」
しーさんの元に通うついでにしばらく暮らしていたある村。
東京からめちゃくちゃ遠いけれど、空気がおいしくて”旅人”にはとても住みやすかった。
そこで出会った一人の女の子に呪術師について教え、目指すように仕向けた。
「釘崎野薔薇。生意気だけど、強さは保証するよ」
「へぇ…。楽しみだね」
「でしょ」
「でも。そうやって、話は逸らそうとするのは、感心しないな」
「ぎゃ…。みんな助けて…」
また一つ、運命の歯車が回る。
来年の災難に備えて…。
いや、彼らが災難を連れてきたのかもしれない…。