第25章 長引く姉妹喧嘩
『次のステップって言っても、もうほとんど終わってるんだけどね』
術式というものは、本来生まれたときに体に刻み込まれているもの。
ここをこうしなさい、こうすれば炎がでて、とか。
人に教えられて使いこなせるわけではない。
生まれてしばらくすると、言葉を話せるようになるように、気づいたときには使えるようになっているものだ。
『現に…ほら。髪の毛、逆立ってるよ』
「…これが私の術式?」
千春はニヤッとして、私の周りを飛び回った。
『烈日呪術。…千夏が最初からもってた相性最悪の術式』
「私と相性が悪いの?」
『それはもう。だって千夏、頭悪いから』
「真面目に!」
『まじめだよ。烈日呪術を使いこなすには、頭を使うからね』
「むむ…」
『まあ、とりあえず、この惨劇を切り抜けられたら、歴史を学ぶことをお勧めするよ』
惨劇。
そうだ。
3人を治療して、乙骨君に手を貸さないと。
そして、傑が逃げないように監視しないと。
「とりあえず、感謝しとく。ありがとう」
『…お人好し』
千春が何を思ってそんなことを言ったのかは分からない。
私のことが本当に嫌いになったのかもしれないし、傑を助けるためにどこかで私を騙したのかもしれない。
けれど、もういい。
この喧嘩はやめるわけにはいかない。
先に折れるわけにはいかない。
いくら千春が力説してきても、千春を認めるわけにはいかない。
だから、一生千春と喧嘩してやる。
偏った理想を追い求めるクズを、私なりの方法で否定してやる。
それが、千春に謝らせる唯一の方法だ。