第24章 熱血サンタクロース
「いって。なんで殴られた…?」
「なんかムカついた」
「理不尽!」
真希に圧かけられる乙骨君を遠目に見ながら、今朝のことを思い出した。
『やっぱり、傑が負け戦を仕掛けるとは思わない。きっと、今回の件には裏があると思う』
傑とある程度の付き合いはあったものの、悟以上の縁の深さはない。
悟がそう言うならと、私もあちらの目的をもう一度考えてみて、ある仮説を立てた。
けれど、それは悟には言っていない。
伝えたら、悟はきっと傑との戦いを優先する。
そうしたら、悟の戦果に守られる予定だった人が死ぬかもしれない。
確証の得られていない事実を元に作られた仮説で、大多数の人間の命を天秤にかけるのは危険すぎる。
「乙骨君」
「は、はい」
「誰も死なせたくないのなら、私の声を聞け。私は今の君よりは強い。私を喰って強くなれ」
あの時、傑を治療する前に問い詰めておけばよかった。
君は幾つ私達に嘘をついたのか、と。
「理由は分からないけど、千夏さんの話を聞きたくなりました」
「どういうこと?」
「言葉が、残るんです。千夏さんの言葉には、強さが滲み出てるから」
「…そんなことを言われたの、初めて」
つい癖で頭を撫でてしまいそうになった手を、慌てて引っ込めた。
この年代の子供は、何とも同じに見える。
「あー、ダメダメ。こういう雰囲気だと、つい言葉が雑になっちゃう」
頬を2回叩いて、ニコッと笑ってみせた。
「とにかく、油断しないで大人しくしててね」
2人に呪力の籠った紙を渡して、教室を後にした。
紙を渡した理由は、何かあった時にすぐに駆けつけられるようにするため。
あの紙を破れば、私が持っている対の紙が破れるようになっている。
「新宿行くの?」
「まぁね。その前に飲み物買いたい」
「…迷子の予感」
数十分迷った末に飲み物をゲット。
日没が近づいていると、コンブに文句を言われたが、あまり気にせずに最も美味しい1口目を味わった。
「…まーじ?」
そして、アイツの呪力を感じた。