第23章 口走る本音
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学長と協定を結び、一安心したコンブだが、なにか忘れているような気がした。
『この術式はコピー。上手くいくか分からないの』
千春の術式は、他人の術式を奪い、渡すというもの。
Q達は千春によって、術式を受け取った。
けれど、それはコピー。
千春は術式を奪うのではなく、コピーすることが出来たのか?
それに、千春は今、”ここ”にはいない。
千春はQより、夏油傑を優先したから…。
(…そしたら、何でQに力を与えたんだろ)
夏油傑を支持するのなら、Q達に術式を与えなければいいじゃないか。
仮に夏油傑を信じていることが嘘だとして、Qを守りたいと思っていたら…。
Qには、もっと万能なの術式を与えるべきだ。
(うーーーん。難しいなぁ)
学長の携帯を借りて、ネットサーフィン。
私の知識はほとんどネットから得た。
スクロールしながら、頭を回し続ける。
記憶を掘り起こし、手がかりを探す。
『術式の原本は…原”人”って言うべき?とにかく、その人はまだ生きてるの。だから、もし傑が今までの禪院家より強ければ、あの子に迷惑がかかる』
だから、できれば使いたくない。
Qはそう言った。
それなら、コピーなんてしなければいいのに…。
(あの子?)
話の流れ的に、禪院家と関わりのある人物。
そして、Qが今まで会ったことのある人物。
不幸にも、私は千春とQが分離した後に作られたから、その人のことは知らない。
(だぁーれだよぉ…)
何で夏油傑が禪院家より強いと、その子に迷惑がかかるんだ。
意味がわからない。
『その子の名前はね────。私が死んだら、謝っておいてね』
その子に会えば、Qを変えられるかもしれないけど…。
肝心なところが思い出せないし。
Qの口の形を鮮明に思い出せれば言いけれど、期待できない。
第一、Qを死なせるつもりはなかったから、ここら辺の話は適当気聞いてたし…。
(なんて言ってたっけ…。濁音があったような、なかったような…)
結局、その子の名前を思い出すことはなかった。
思い出せないまま、12月24日──百鬼夜行の日を迎えた。