第22章 一握の優しさ
「仏様ね…。よく分かってるじゃないか」
去りゆく女2人を見て、少し関心。
「呪術も扱えない猿共め」
「素が出てますよ、夏油様」
おっと、いけない。
私としたことが。
「幹部が揃いました。会議室へ」
懐から除菌スプレーと消臭スプレーを取り出して、身体中に振り撒く。
こんなもの気休め程度にしかならないが、家族に不快な思いはして欲しくない。
「久しぶりに皆で写真を撮ろう。一眼どこだっけ」
「こちらに」
自撮りをすると、忘れたはずの記憶が脳裏を過る。
自分にも青春というものがあったことを、一瞬だけ思い出してしまった。
心の中でため息をつく。
ため息をつくと幸せが逃げていく、と誰かが言っていたような気がする。
「夏油!夏油を出せ!」
今回の場合、幸せが逃げたのではなく、不幸を呼び寄せてしまったようだ。
金を集めるだけが能の猿がやってきて、汚らしい顔で唾を飛ばす。
見てられないほどの醜さに、一周まわって笑いが込み上げてきた。
「お金がないなら用済みです」
猿共には利用価値がある。
利用価値が無くなったのなら、存在している理由が無くなったも同然。
コイツが消されるのは、道理に適っている。
「穢らわしい。本当に同じ人間ですか」
同感。
死体の片付けは後でやるとしよう。
久しぶりに全員が揃うのだ。
こんなゴミに時間を取られてはいけない。
「時が来たよ、家族達。猿の時代に幕を下ろし、呪術師の楽園を築こう」
私達は血の繋がりよりも遥かに強い繋がりを持つ。
それを家族と呼ばずして、なんと呼ぼう。
乙骨憂太の登場により、私達の夢は現実に近づいた。
そして、長年練ってきた計画をもう一度整理しようとした時。
ソレはやってきた。