第21章 紡いだ新たな線
翌日、目が覚めると隣に悟の顔があった。
当たり前のことだけれど、それがとてつもなく嬉しい。
「…んー」
寝ぼけて私にくっついてくる悟が、愛おしい。
かっこよくて、可愛いなんて。
そんな人が私のモノになったなんて。
幸せ以外の何物でもない。
朝ごはんを一緒に食べて、世界の情勢をふざけ半分で話したり。
洗い物をしてたら、いつの間にか水遊びに発展したり。
びしょびしょになった床の責任を押し付け合いながら、一緒に掃除したり。
着替えると言っているのに、ついてくる変態を押し退けたり。
新婚ですか?
んん?
「じゃ、行ってくる」
「行ってらー」
「…ちゅーは?」
「するか!」
悟が普通の人間だったら、玄関のドアが閉まる音に哀愁を寄せることもできる。
けれど、悟はドアを使わずに一瞬で高専まで移動してしまうので、哀愁を感じる余裕もない。
振り返ってみると、昨晩とは相反して、生活の様子を感じられる部屋になっていた。
所々に荷物が乱雑して置かれ、完璧とはいえない空間。
きっと今まで悟は、忙しくて家に帰る暇がなかったのだろう。
最強と謳われる悟の強さは並大抵のものではないことは分かるが、1度この目で見てみたいものだ。
「さて、と」
携帯を手にして、情報を確認。
コンブがいたら自分でこんなことをしなくても良かったと言うのに。
コンブは従順なだけでなく、仕事ができるのだ。
(15:00か)
変な宗教団体の集会には参加したくない。
訪問するなら、集会の後。
15:00となると、まだまだ時間はある。
掃除と洗濯、コーヒー牛乳と食材の買い出し。
そんなところで簡単に時間は潰せそうだ。
できる女の子の時間の使い方を思いついたところで、早速行動。
出来とスピードに関する文句は受け付けない、と1人で牽制して、まずは選択に取り掛かった。