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【呪術廻戦】infinity

第18章 カゲロウ




「あ、夏油傑君…ですか?」



フルネーム…。

おなかを押さえながら、スピーカーにしろと指示を出す。



『なんでフルネーム?』



夏油からしたら、突然電話がかかってきたうえに、めったにないフルネーム呼び。

誰でも心中を察せられると思うが、電話の相手は人付き合いの苦手な奴。

両手で大事そうに携帯を持って、涙目で私を見てくる千夏。

夏油の言葉を拒絶と捉えてしまったんだろう。



「違う違う。誰でもフルネームで呼ばれたら、違和感あるだろーが」

「でも、さん付けはなんか違うじゃん」

「普通に呼び捨てでいいでしょ」

「『夏油』?なんか偉そうじゃ…」

「いいの!」



め、めんどくせー…。



「しょーこが、げ、夏油に電話かけてみたらって言ったから、かけてみたんだけど…」

『傑でいいよ』

「下の名前?」

『硝子のことも下で呼んでただろ?』

「わ、分かった!すぐる、ね」



名前は棒読みだが、両者下の名前で呼ばせることに成功。

夏油側は既に高専に戻っていて、一足先に休んでいるらしい。

夏油と楽しそうに話す千夏をほほえましく見ていると、私の携帯に着信が。

五条からだった。



『ずいぶん仲良くなったみたいだねー』

「まあ。課題はまだ山積みだけど」

『隣で傑が笑ってるよ』

「こっちも笑ってる」



既に千夏は私を気遣ってスピーカーモードを解除してくれたため、夏油の声は既に聞こえなくなっていた。

もし、スピーカーモードのままだったら、五条が言っていた夏油の笑いを聞くことができただろう。



『それで。どうだった?』

「別に。普通だったけど」

『ならいいや』

「何を心配しt…」

『ありがとー。じゃーね』



隣で行われている通話とは対照的に、楽しさのかけらもない通話だった。

むしろ、不機嫌になった。



「あはは!それは殴っていいっしょ!」



今までの数少ない五条との絡みの中で、五条が千夏を大切にしていることは伝わっている。

そして、隣で笑う千夏の顔を見たら、五条が守りたいものが何なのか、簡単に分かってしまった。

これは何があっても失いたくないものだろう。

それが、大切な人であるならば、なおさら。
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