第1章 千夏様
赤
青
黄色
「なんで黄色だけ”色”ってつくんだろー?ふっしぎー!きゃはは!」
「そんなの不思議でもなんでもないでしょ」
少女達は歩いていた。
何の変哲もない道を。
しかし、少女は二人きりではなかった。
「君もそう思うよね?」
塀の上を奇妙に動く塊。
生き物と認めたくないほど、グロテスクな見た目だった。
「あれ、君は話せないの?」
ぎょろぎょろとした水晶体に、自分の顔が映った。
鼻を中心に少し丸み帯びて歪んだ、自分の顔が。
「この間の──ちゃんは話してくれたのに。つまんね」
そして、少女達は再び歩き出した。
まるで、同級生と別れるように、ごく自然と。
まだ少女は理解していなかった。
自分の見える世界が、普通でないことに。
そして、自分が友達と思っている生物が、今この瞬間に誰かを呪い、祓われていることを。