第12章 無駄な生と必要な死
「千夏、こっちだよ」
声のした方向を向くと、傑が手を挙げてくれた。
「分かりにくいっつーの。そろそろ場所固定してよね」
「私達だって暇じゃないのー」
私の特別任務は留まることを知らず、上が用意した呪霊なのか、単に呪霊が溜まっているだけなのか、そんなことを考える暇はなかった。
「今日は何する?」
「だるまさんがころんだDXとか?」
「何それ。つまんなそうだし、負ける気しかしないんだけど」
そんな私の癒しは、21時から始まる30分間。
私がみんなと話せるよう、皆が時間を作ってくれたのだ。
ゲームをしたり、ただお喋りをしたり。
基本的に毎日、こんなくだらない時間を共有している。
「俺はパース」
「また?五条もやろうよ」
「やだ。だるい」
五条は大抵この時間は帰ってしまう。
最初の1分ほどだけ参加して、部屋に戻る。
そして、今日も私の誘いも虚しく、帰って行った。
「すぐ帰るなら、来なければいいのに」
ほんと、硝子の言う通りだった。
五条なら、五条の性格を考えるなら、というか、普通に考えて、来なければいのにと思ってしまう。
けれど、五条は毎日必ず来る。
私に会いたくないなら、来なければいいのに。
話したくなければ、来なければいいのに。
面倒だと思うなら、切り捨ててくれていいのに。
『待ってて。”俺が”最強になるまで』
分かってるよ。
五条が私のために頑張ってくれていること。
けれど。
中途半端に顔を見せられる方が、余程辛い。