第11章 裏切りのスパイス
「冥冥さんが悪魔だと分かったところで、この話は終了!さっさと任務を終わらせよ」
「任務なんてないよ」
…。
「…ほんっと、冥冥さんなんて大っ嫌い!私、皆のこと振り切ってまでここに来たんだよ!?」
冥冥さんは私を殺すために、わざわざこんな所を用意して、呪霊を用意して、私を呼び出して…。
つまり、これは冥冥さんの独断だったわけで。
周りから見たら、ただ学校を飛び出しただけ。
帰ったら何が待っているかは簡単に想像できる。
「ねー、ここ出たらカフェでも行こ!パンケーキ!」
「自分を殺そうとした相手と出かけたいの?」
「そんなの今はどうでもいい。帰りたくないだけ」
夜蛾先生からは『どこ行ってた』と、殴られると思うし。
硝子と傑には、高専に足を踏み入れた途端捕まりそうだし。
五条には隠し事が通用しなそうだし。
「奢るから。お願い!このとーり!」
「仕方ないね。たまにはこういうのもいいかもしれない」
「あー、絶対、奢りっていう単語に惹かれたでしょ!」
冥冥さんのことは、本当に何も知らない。
本当の名前も、歳も、もしかしたら性別も…?
皆は知っているかもしれないけれど、私は知らない。
それほどまでに冥冥さんを避けてきたから。
「タダでは奢らないからね!私のマシンガントークに付き合ってもらうよ」
「それなら…」
逃げようとする冥冥さんの腕をホールドオン。
がっしりと掴み、全体重をかける。
「あのね、あのね。これは1週間くらい前の話なんだけど、五条がね~…」
「私は五条よりも夏油の方が…」
「冥冥さん、分かってない!五条の方が100億倍カッコイイよ。っていうか、五条よりカッコイイ人いないから!」
「…顔の話じゃないんだけどね」
そういえば、冥冥さんのプライベートの話も聞いてみたい。
どこで、どんな仕事をして、どんな人と関わってきたのか。
せっかくの機会だ。
そこの所も詳しく聞いてみよう。
この日、冥冥さんとパンケーキ屋に行って正解だった。
この日の話が私を助けることになるとは、まだ誰も知らない。