第1章 千夏様
先生の動きを先回りして、運動場に出た。
数分後、先生は予想通り私を追いかけてきた。
「そろそろ自分勝手な行動はやめたらどうだ」
「自分勝手?はっ、どこが」
自分勝手という言葉でまとめないでほしい。
せめて、采配を正しく行ったと言ってほしい。
「こうやってくっちゃべってる間にも、呪いの被害は出てるでしょ。ほら、さっさとよこせ」
先生は再びため息をついて、被害報告書を渡した。
場所、級数、発生時刻…。
細かに書いてあって、先生と話さなくていいのが良い点。
「気をつけろよ」
「先生もね。あんましため息ばかりついてると、幸せ逃げてくよ」
「…誰のせいだ」
「呪いのせいだよ」
右方向から、補助監督の人がやってきた。
1人で行ったほうが色々と楽なんだけどな。
八乙女千夏が補助監督をいじめながら歩いて数十秒。
彼女の上着から何かが落ちた。
「おーい、なんか落ちたぞ!」
夜蛾は叫んだが、2人には聞こえていないようだ。
今から走って拾うのも面倒なので、帰ってきたら渡すことに決めた。
――学籍番号******――
氏名 八乙女千夏
学生証を落とすなんて、なんて奴だ。
今から追いかけるか?
――特――
「でも、あんな奴が特級呪術師なんだよな…」
彼女は特級呪術師。
この事実は哀しい現実を写す鏡であった。