第70章 𝘚𝘦𝘤𝘳𝘦𝘵
早く、早く
自分がどうやって動いているのか不思議になるくらいの速さで。
もう……なんでもいいから
早く、早く……!!!
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「あー…行きますかっ」
「待たなくていいの?」
会いたいよ?
でも、さっき電話したし…。
私用を優先して誰かが死ぬとするのなら、それほど千夏が怒ることはない。
「……っ」
本当にタイミングがよろしいこと。
大好きな存在が、ひとつ、ひとつ……もうすぐそこに…
「っ」
「ぁっ」
ああ、もう……諦めてたのに。
「ぅぁ…」
ドアをくぐる前に崩れたからだ。
走ってきたのだろうか。
この子は本当に…。
「っ、っ…しゃ…さとる…」
「…ん」
手を伸ばせば、縋りよってきて。
よく見たら色々怪我をしていて。
こんなになるまで頑張ってくれたんだって思うと、泣きそうになる。
「……あんた誰?」
千夏の後ろに立つ、千夏のそっくりさん。
『千春』
「ふぅん。よく分からないや」
よく分からないのは今に始まったことでは無い。
まぁ……いいか。
千春が人間になっただけ。
うん、それだけ。
「ひぃ〜っ、ぐ、ぅっ、ぁあ〜……」
「全部聞いたよ。頑張ったね」
「わ、たし、だけっ…!なに、もでぎなかっだ…」
「…本気出せばいいのに」
「ほんぎ、だっだもん…!」
「ううん。千夏はまだ分かってない。自分に何ができて、自分がどうすべきなのか」
それはとても残酷だけれど、千夏にその役をしてもらう必要がある。
「千夏は強いから、全員……全員助けないといけなかった。でも、出来なかった」
「おいお前…」
『…』
言葉が先行しそうになる硝子を、千春が視線で制す。
やはりこの女は強い…。
「それはね、千夏が本気を出さないからだよ」
「ぼんぎ、だっだもん!」
「ううん。じゃあ、どうして呪力を解放してないの」
「っ…」