第69章 取捨選択
『あれ、千夏じゃなかったら死んでたよ』
「でしょ!?本っ当に怖かったんだけど……!!」
『…逆に言えば、千夏だから助かったんだ。感謝くらいしろ』
……え、そういうスタンスでくる?
『宿儺の指を取り込んだ呪霊を、人を守りながら倒すなんて常人の術師にはできない』
「でも、1本でしょ?」
『馬鹿なの?1本取り込んだだけで……術師の言葉を借りたら、特級に即分類されるからね?』
宿儺なんて誰でも知っている名前だけれど、正直想像がつかない。
そもそも、指を食ったらその力が手に入るとかよく分からないし。
指そのものにそれ相応のエネルギーがあるのなら、本体が残ってたら一体どうなっていたのか…。
「指あったー!!!っ……と」
ド派手に転けたなっちゃんに目もくれず、春ちゃんは手に持っていたフタを、かろうじて残っていた呪霊の残痕に被せて完全に消した。
「痛い〜……」
「大丈夫?」
なっちゃんの膝からはダラダラと血が出ていた。
よく見たら、服もボロボロだし、色々なところに血が転々としている。
「そこ、薬局っぽいし、色々買ってくるよ」
「お金持ってるの?」
「そりゃあ、ある程度は」
「私、もうどっかいっちゃったよ……今度返す!」
私が呑気にいつも通り金ちゃんと遊んでいる間に、相当なことがあったんだろう。
その中でなっちゃんもこんな傷や怪我を負って……。
いや、この程度の負傷で済んでいることが奇跡なのかもしれない。
「841円になりまーす」
軽食と絆創膏。
それと消毒液。
外は酷い有様なのに、それを知らないかのように店の中は通常営業だった。
「きぃ〜染みる〜!!」
人間って、こんなものなのかもしれない。
命の危機に晒されるなんてことが滅多にないから、どうせ大丈夫だと思っちゃうんだ。
「こんなことになるなら、役に立てるくらいに授業受けとけばなぁ…」
「そうだよ」
「先にはぶったのはそっちでしょ」
「もー。私も頑張ってたのに、いじけて学校来ないから…!そういう時はねぇ、逆に毎日行って遅くまで残って、迷惑かけるのが1番なのに」
やっぱり、なっちゃんくらいイカれていないと、生きていけないのかもしれない。