第66章 親愛なる生徒へ
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「じゃーな」
「や゛ーーーだーーー!!行くな〜〜!!!」
2007年12月30日
「あばよ〜」
「離せ、こら」
真昼間から騒いでいるのはいつもの4人。
窓から見える様子もいつもと変わらない。
大晦日前日ということで、呪術高専は本日から3日まで休校となる。
実家に戻る生徒が大半だが、様々な理由で寮に残る生徒もいる。
俺が担当している生徒のうち、3人は実家へ、残りのひとりはこの場所に残ったまま。
ここ数日、そのひとりが「みんなも残ろう」とやんわりと説得をしていたようだが、下の様子を見る限り失敗し、現に3人は既に荷物を持って歩き出している。
残された1人は何やら暴言を吐いているが、特に反応が帰ってこない状況は何とも寂しい。
「あー皆がいなくて清々する!!ひとりの時間、大好きだもんねー!!
」
……痛々しい限りだ。
年越しくらい一緒に居てやりたいが、生憎仕事が詰まっていて休めそうにない。
代わりの者……と言っても、千夏が人見知りしない相手は限られていて適任が居そうにもない。
彼女が実家に帰れないのは……いや、帰省させるわけにはいかないのには、いくつか理由があるが、本人も帰省を避けている。
先日の1件で千夏が深く傷ついたことが最もな理由だろう。
元々、千夏はごく一般的な家庭で育ったが、事故をきっかけに術師としての能力面の危険性が上を脅かし、隔離施設に入れられるかのように高専にやつてきた。
そのとき、上が随分乱暴に手続きを行ったせいで、千夏の両親は激怒した。
しかし、一般人がどうこうできる組織では無いので、無理矢理にでも納得させた結果が今である。
それ以降、千夏は実家に帰ることを禁止され、コンタクトを取ることすら申請が必要に。
けれど先日、申請無しに実家に戻ったせいで、しばらくの外出禁止令が出て、今は今後の両親への対応の制限を見直されている。
何があったかは知らないが、千夏は泣いていて、硝子は千夏の親に激怒した。
まぁ、そんなこんなで大晦日を迎えることとなったが…。
数年後、思い出してもこれは何とも酷い正月だった。