第65章 家系
「家入さん!!!」
余程意識を飛ばしていたらしく、気がついたら肩を揺さぶられていた。
「大丈夫ですか」
「え、ええ…少し考え事を…」
いつ死んでもおかしくない状況で、よくここまで意識を過去に移せたものだ。
(…千夏)
四六時中一緒に居た訳では無いし、なんなら歌姫先輩の方が良く遊んでいた。
よく考えたら一緒にいたのは高校生活2年半程で…。
けれど、今1番会いたい人物は千夏だった。
彼女なら、この気持ちを吹き飛ばしてくれそうな気がした。
こんなに過去が疎ましいことがあるだろうか。
全て解決したと思っていたのに、また掘り返されて。
こんなことか何度も、何度もあって、私はあと何回苦しめられれば…。
”う〜…”
……千夏もこんな気持ちだったのだろうか。
あの子は人に期待をしすぎる。
何度も裏切られているのに、信じるのをやめない。
「疲れたのなら少し休憩を…」
「大丈夫。やろう」
「…はいっ!」
また昔のように皆と笑える日は二度と来ない。
でも、あの時の空気を取り戻したいと思う自分が消えてくれない。
もう、それは受け入れようと思った。
簡単に消えてくれる自分でないことは、この数分間で思い知った。
「ちょっと!もっと押さえて止血しなさい!」
「は、はい!」
……考えたくはないけれど、もしかしたらもう彼女には会えないかもしれない。
そんな考えが過ぎっても安心していられるのは、
(…これを信頼と言って、いいのだろうか)
かなり一方的な期待だけれど、致し方ない。
きっと、歌姫先輩もこっちに来るはずだ。
この世界に生きることを決めたからには、こんな感情を捨てなければいけないのかもしれない。
でも、私は自分が望む未来が必ず訪れると信じている。
”できないって思うからできないんだよ?”
そう、彼女のように────