第13章 英雄ぶるのも大概に
●天 side● 〜体育館〜
己の不参戦や退場で日本一を二度も逃し、その事実に絶望した挙句バスケを続けない決断をしたんだろ、と火神は天の話をまとめた。
それをあたかもバスケ部の総意かのように語り、
「責任感じてんだか何だか知んねーけどよ。
ゴタゴタ御託並べても、
結局テメェーが悪ぃーんじゃねーか」
そう言い捨てて、天を非難した。
背中にぶつけられる鋭い言葉の数々。突きつけられたナイフは皮膚を切り裂き、天の心臓を貫く程の威力を持っていた。
天はそんな痛みに悶え苦しみながら、静かに己と戦っていた。こんな挑発みたいな言葉に乗ってたまるか、と。
「元トップ選手とか言われてる割には、
ハートは大したことねぇーんだな」
天の心中を見透かすかのような火神の言葉。それをきっかけに、それまで口を噤んでいた日向が止めに入った。
「おい火神!オメェ流石に目に余んぞっ!!」
主将の仲裁の言葉は右から左で、火神は構わず天を責め続けた。
「やり直そうとする気がないから
チームもバスケも捨てちまったんだろ?
リベンジもしないでそこで終わり、なんて
結局ただのアマチュアじゃねぇーか」
その時だった。天の中で、何かがプチンッと音を立てて切れたのは。
火神が口を開くごとに、言ってやりたいことは増えるばかりだった。それでも喧嘩を買わず、反撃もせず。なんとか耐えていられていたのだ。
しかし、最後に言い放った言葉で、天が忍耐を保てていられるレベルを火神は超えてしまった。
「やっぱ腐ってんな…日本のバスケなんて」
『てめぇ…』
言われっぱなしはこれで終わりだ、とでも宣言するかのように、天はそれまで重く閉ざしていた口をようやく開けた。
天自身、こんな感情は久しぶりだった。長らく忘れていたような…抱かないで済む道を選択してきたようにも思えるが。
今あるのは火神に対する、シンプルな怒りだった。
『いま私に…なんて言った?!』