第13章 英雄ぶるのも大概に
●天 side● 〜体育館〜
試合が終わった後の体育館に、歓喜と驚愕の声が響いた。
「「 うわぁああ!! 」」
「一年が勝ったぁ!!?」
いくらミニゲームとは言えひと試合終わった後にも関わらず、その喜びようからは少しも疲労を感じられない。それだけ嬉しいという気持ちは天にも分かったし、純粋に勝利を喜んでいる同級生たちが微笑ましかった。
コート上が賑わう中、天は視線をスコアボードへと向けた。
一年 v s 二年
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38 37
見間違いなどでは決してない。スコアボードに記された通り、一年対二年で行われたバスケ部の試合は、下級生の勝利で幕を下ろした。途中何度もハラハラさせられたが、思ったより良いものを見せてもらったと天は感じていた。
全ては黒子の…かつて、“幻のシックスマン”と呼ばれていた少年の、今もなお健在なバスケテクニックが披露されてから、本当のバスケが始まった。
少なくとも天はその光景に心躍ったし、今日の試合はふたつの意味で黒子の大勝だと思わざるおえなかった。
しかし、裏を返せば“それだけ”だ。言ってしまえばこの試合、黒子がいなければ一年は確実に負けていた。フツーのプレイに関して並の選手以下とは言え、黒子の代わりに他の一年を出していたとしても、戦況は好転しなかったはずだ。
「私ならあの局面でパスは出さない」、「逆にこのシーンでは連携した方がもっと楽に点を稼げてたはず」。
そんな風に天は、身に染みついたルーティンをこなすかの様に、今日の試合を振り返ってしまっていた。
『私なら…もっと』
気づけばそう口にしていた。しかし、全てを言い終わるより先に、天は口を噤んでしまった。ゲームメイクを本格的に考察していた自分に驚いた。ほぼ条件反射の様なものだった。
ところが、途中で咄嗟に思い出した。苦労してバスケから離れたというのに、これでは意味がないということを。