第12章 ミニゲーム
●天 side● 〜体育館〜
「一年にここまで押されるとはな…」
「つーか火神だけでやってやがる…」
一年のチームで、脅威となる選手は火神だということは分かりきっている。火神のプレイがどこか乱暴なのは、チームの誰かに頼るより自分が決めた方が勝率が高いと、本人が思っているからだろう。
二年もこのまま手を打たなけりゃ確実に負ける。
しかし天は今、火神よりも…もっと言えば試合の勝敗よりも、別のことが気がかりだった。火神とは別の意味で目立っている選手のことだ。そもそも、ここにいる全員が認識できているのかも危うい。
天はコートの上の流れに集中した。ボールの行き交いから、同チームのプレイヤー同士でなければ繋がれない結びつきに割り込んでいく。考え方によっては、それは“チームワーク”という言葉で言い表せるのかもしれない。もしくは“絆”と言うべきか。
つい先程出来たばかりの即席チームに、そんなものが生まれているとは思っていないが、微かに感じ取れる紡ぎ糸を天は静かに辿った。弱々しく、おぼつかない細々とした糸で、一年たちは今かろうじて繋がっている。
一人、二人と連なり…三人、四人と繋がり…確かに、五人でチームになっている。そんな不確かな糸と同じくらい、目を離せば見失ってしまう程消え入りそうな男の子。天にはコート上で戦うその姿が、解(ほつ)れた糸をいま必死に結こうとしているように見えた。
一度その人物を目で捕えると、「決して掴んで離さない」と言うかの様に視線を逸らさない。天はただ一言、瞳の中に捕えたその影に向かって小さく囁いた。
『黒子くん、何やってんだよ』