第10章 チャイムの鳴る前に

●黒子 side●　〜図書室前〜


リコや伊月は、耳を疑った。
黒子が「藤堂さん自身に、選んでもらいませんか？」と言ったような気がして。


頭の中は疑問で埋まり、顔は困惑で染め上げられた。
それでも黒子は、構わず続けた。


「そもそも、ボクや先輩の策略に乗せた上で
　藤堂さんをコントロールしようとしたこと自体が
　間違いだったんです」


そこまで聞いて、リコは気づいた。
黒子は、バスケ部の元にやってくるのを、藤堂自身の意思に委ねようとしているということを。


しかしそれでは、リコに一抹の不安が残る。


「でもそれじゃあ…
　必ず会えるとは限らないじゃない！」

「それもそうかもしれません」


自らの不安を、思ったよりも軽くあしらわれてしまい、リコは思わず「えぇ…」と溢した。


しかし、黒子には先輩を見放すつもりも、藤堂を諦める気もなかった。
だから、


「ボクに任せてもらえませんか？」


黒子はリコに、そう提案した。
「選択肢だけは、ボクが藤堂さんに必ず託します」と言って。


黒子は今朝…もっと言えば昨日の夜から、藤堂と真っ向から向き合うと心に決めていた。
友人として。


選んでもらわなければならない、藤堂本人に。
偶然を装った必然などではなく、藤堂の意思でなければならない。


それをもう、二度と忘れないと誓った。
藤堂と過ごした時間を、偽物にしないために。
これから先の藤堂との時間も、偽物であってはならない。


そしてあとは…


「あとは、運が味方してくれるかどうかです」