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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第9章 restart and redo.


●no side● 〜体育館裏〜


「さっきから藤堂だのなんだの言ってるけどよ。
 強ぇーのかそいつ」


火神のその問いかけに対して答えたのは、


「強いなんてもんじゃないぞ!」


それまでの会話を、全てリコに任せていた伊月だった。
途端に、火神のみならず全員の視線が伊月へと集まる。


それを感じ取ったためか、伊月はさらに続けた。


「中学生にして実力のあるエースで、
 女子バスケ界の日本一を
 期待されていた選手だったんだ」


そんな風に、火神に向かって熱弁してみせる伊月だった。


しかし…


先輩のそんな姿を見ても、火神はただ「ふ~ん…」と受け流す程度だった。


火神からしてみれば、いくらその選手が強いとはいえ、女子バスケの話であれば興味も激減する。


ましてや、


「そんな凄ぇ奴、いたらすぐに
 気づくと思うんだけどな…」

・・・・・
中学レベルの話となれば、興味が湧いてこないのは必然とも言える。
「所詮そいつも大したことないんだろう」と言うのが、火神の本音だった。


だから「女子は女子でやってればいい」と、投げやりに考えていた。


伊月が続けるよう口にした、


「中学で終わるのは
 あまりにも勿体なさすぎる程に…」


という言葉が、火神の耳に入ってくるまでは。


それを聞いた火神は、


「は?んだよそれ」


無意識のうちに、伊月にそう聞き返していた。


いや…聞き返さずにはいられなかったのだろう。


名前で聞いただけの、藤堂 天という名前の選手。
中学時代から女子バスケ界の日本一を期待されていたのだとしたら、実力はそれなりにあるはずだ、と火神は予想を立てた。


だから、伊月が口にした「中学で終わる」という言葉を聞いた時。
とあるシンプルな疑問が、火神の中に生まれたのであった。


実力者なら続ければいい。
女子バスケ界で日本一になってみせればいい。


「なのに、なぜ終わる必要がある?」と…


なぜなら…


「“終わる”って、一体どういうことだ?」


火神は誠凛高校に、女子バスケ部が無いことを知らなかったのだ。


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