第9章 restart and redo.
●リコ side● 〜体育館〜
その一方、
「ところでカントク。
藤堂さんが、どうかしたんですか?」
リコと伊月の事実確認だけに使われ、以後放置されている黒子が、今度は自ら2人に斬り込んだ。
黒子のその反応に、
「え?」
リコは瞬時に違和感を覚えた。
リコから見たその時の黒子は、あまりにも冷静過ぎていた。
だから、考えるきっかけとなったのだ。
「黒子は藤堂 天のこと知らないのだろうか?」と。
黒子のいた帝光中も、全中に出場していた。
であるならば、同学年で同じ全中に出場していた藤堂 天のことを、知っていてもおかしくはない。
しかし、今の黒子の反応を見る限り、その可能性は皆無に近いということが分かる。
明らかに、藤堂 天の正体を知っている者の反応ではない。
試合が男女で別れている限り、知らなくても無理はないのだろう。
だからリコは、
「実はね。藤堂 天さんは」
黒子に藤堂 天の素性を説明しようとした。
その時だった…
「えっ?!てことは、」
体育館中に響き渡るほどの声量で、
「去年全中決勝まで進んだ強豪校の女の子が
誠凛にいるかもしれない、ってことなのか?!」
という声が、リコの声を搔き消してしまった。
それまでは、リコに集まっていた1年生の視線。
ところがその声に反応するように、視線はたちまち自分を外れ…
そして、別の一点に集中したことがリコには分かった。
・・・・
だからリコは、その別の一点…
つまり、声の発信源にいるであろう人物に向かって、心の中で呟いた。
「驚いたついでに説明ありがとう…土田君」と。