第9章 restart and redo.
●リコ side● 〜体育館〜
日が完全に落ち、世界が群青色で包まれる中…
誠凛高校の敷地の一角は、体育館から漏れ出る明かりに照らされ、“眠らない街 東京”を表現しているかのようだった。
その体育館では、
「はーい!じゃあ今日はここまでにしようか!」
「「 お疲れっした!! 」」
今まさに終了の号を合図に、その場にいる面々が部活動を後にしようとしていた。
散り散りに…
そして、どこか堅苦しい空気を感じさせながら。
そこには、互いに励ましあったり、学生らしくふざけあったりする姿は少ない。
その様子は誰の目にも、“長い間、共に練習に励んできた者同士”とは映らないだろう。
どちらかと言えば…
「“寄せ集めの集団”と称した方が正しく表現できている」と思ってしまう程に、部員たちから親密さは感じられない。
しかし、その様子から「この部活動は統率が取れていない」とレッテルを貼るのはまだ早いだろう。
大切なのは今日が、新年度を迎えた誠凛高校の、部活動初日であるという事実。
新年度である限り、昨年と同様のままではいられない。
新入生を迎えることで、各部活動は更なる発展を成し遂げるのだ。
“体験”・“見学”問わず、新入生を迎え入れた結果。
部外者の目に、一見“統率の取れていない部活動”として映ってしまうのも仕方のないことだ。
だから、現状を“新体制”と称した上で、今後に期待するのが一番正しい。
・・・・・・
その部活動の…男子バスケ部の。
監督である相田 リコは、そう考えていた。
そして、体育館に集った他の生徒たちにも…
上級生・新入生問わず、10人いれば10個のそれぞれの思いや考えが、そこに同時に存在していた。
ある者の“変化”が。
ある者の“進化”が。
ある者の“約束”が。
そして、少年の“再出発(restart)”が。
失望から這い上がった男の“やり直し(redo)”が。
体育館(そこ)にはあった。