第8章 すれ違いと疑念
●天 side● 〜帰路〜
この時の天は、「今日という一日に心残りが無いように」と終わりの時間を前に輝きを増す太陽を、睨みつけるような表情をしていた。
その瞼を細めているのは、本当に太陽のせいなのか。
もしくは、部活動に励む少年少女たちのせいなのか。
はたまた、それとは別の蟠りを心の内に秘めているのか…
いづれにせよ、それを追求するのは天自身が望んでいなかった。
だから天は、全てを太陽が放つ輝きのせいにした。
・・・・・
今の自分があるのも、今の自分がこんな表情をしているのも。
「太陽が眩しすぎるから」と、全てを太陽に託けて。
内側に湧き上がる“何か”に気づかないふりをした天は、踵を返し歩行を再開した。
その後、太陽から目を逸らした代償であるかのように。
西陽を受けた天の後頭部は徐々に温まっていった。
背中ばかりが暖かくなってゆく…
コンクリートの地面に落ちた、黒く長い自分の影。
夕日に向かって走り出した運動部の部員たちとは、真逆の道を天は進んで行く。
迷いも、戸惑いもなく。
ひたすらに離れようとする。
そうやって、自身の黒い影を。
平気なふりをして追いかけ続けた天は。
いつの間にか、自宅に辿り着いていた。