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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第7章 窓際で出逢い


●no side● 〜1年B組〜


黒子 テツヤも天と同様。
バスケを切り離すために、誠凛(ここ)にいるとするならば…


天がそんな仮説を立てたのは、別に消去法でも、当てずっぽうでもない。
ちゃんとした理由がある。


それは天が知る限り、黒子がバスケをプレイする立場に身を置くとは思えなかったからだ。


そして、どうしてそう言い切れるのか…


それは全て、昨年の全中に関係している。


黒子の所属する帝光中学が、三連覇を目前に挑んだ決勝戦。
そこで事件は起きてしまった。


そして何を隠そう。
天は、その目撃者の一人だった。


あれを目の当たりにすれば、黒子 テツヤがどのような気持ちで、決勝の試合を観ていたのか。
それは想像に容易いだろう。


だから天は思ったのだ。


「黒子 テツヤも、自分と同じなのではないか?」と。


だとしたら、天の胸の内にある不安も解消される。
過去についてとやかく言われることも、バスケに引き戻されることも無い。


お互いバスケと縁のない、新しい生活を望んでいるのだとしたら…


それはそれで、平和なのかもしれない、と…


天は再び、隣に座る黒子の横顔を盗み見た。
やはり何度見ても、作り物のようなその顔は美しい。


そして、天は思ったのだ。


もし、自分が見つめているこの少年が。
同じ目的を叶えたいと思っているのならば。


「きっと私たちは、良い友だちになれる」と。


そう思って天は、黒子から目を逸らした。
正面を向いたその顔は、もう頬杖をついておらず。


ずっと気にしていた右頬の跡は。
疾うに薄れてしまっていた。


ところで…


今の今まで、ずーーーっと気づかないでいたのだが…


天は、今になってようやく気がついた。


「次は気を付けよう」、「次こそはきっと」と思っていたにも関わらず。


結局…


挨拶を失敗していることに。


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