• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第6章 偶然目があっただけ


●no side● 〜1年B組〜


火神が、その心の内の成すままに、


「えっ…怖…」


と、口にした時。


自分が発したその言葉に、少女の顔が驚きで引きつったことが分かった。


またしても、火神から不審な眼差しで見下ろされることとなった少女。
言葉の出てこない唇は、ただパクパクと動くだけだった。


火神は、そんな少女の傷心にとどめを刺すかのように。
“ドカッ!!”っと音を立てて、自身の席に座ってしまった。


「阿呆とつるんではたまったもんじゃない」と。
火神はこの時、少女を完全に無視することに決めたのだ。


新生活のスタートを切るにあたって、この出会いは火神にとって、決して望ましいものではなかったのだろう。


しかし、自分にとってどうでもいい人物と関係を築けるほど、火神がお人好しではないためでもある。


だから、不本意とはいえ、今ここで少女と対面せずとも。
どの道火神は、ただのクラスメイトの一人である少女と、在学中に深い関係を築くことはなかったはずだ。


望んですらいない。
喜ばしくもない。


自席に初めて座った火神は、そんな出会いを。
今日起こった怒涛の出来事の一部として、終止符を打ったのであった。


そんな、完結の少し前…


最後に火神は、再び少女に視線を向けたのであった。


/ 358ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp