第5章 噂話
●相田 リコ● 〜校庭〜
私はたぶん。
“あえて”の使い方を間違えていた。
“あえて強豪を選ばなかった”わけじゃない。
“あえて誠凛を選んだ”のだとしたら。
「あえて…」
「誠凛を選んだ…」
気づけば、伊月君と私は。
恐らく同じ方向に視線を動かしていたと思う。
小金井君を通じて水戸部君が言った「あえて誠凛を選んだ奴」というのは。
私たち2年の中で、1人しかいない。
「あ。」
そのことに、本人も気づいたであろう時。
私はもう一度水戸部君の言葉を思い出していた。
代弁した、小金井君の声で…
「ポテチちゃんって、
つまりはオレたち2年と同じ境遇でしょ?」
“藤堂 天”…ポテチちゃんは、私たち2年生と同じ境遇。
それを逆転させてみるとよく分かる。
私たち2年生もポテチちゃんと同じなんだ。
“女バスのない誠凛”に入学したポテチちゃん。
“女バスどころか男バスもない誠凛”に入学した私たち。
そして、そんな“バスケ部のない誠凛”を「これ幸い」と思い。
“あえて”誠凛を選んだ奴は…
「俺…か?」
それは、日向君だ。