• テキストサイズ

恋はどこからやって来る?(短編・中編)

第70章 七支柱春药 〜弍〜 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿



「おはようございまーす、冨岡さんはご在宅でしょうか…」

「なっ…!?」

「早朝カラ誰ジャ?」

義勇の脳内にポッと思い浮かんでいた人物が頃合いよく現れた為に、普段あまり起伏がない彼の表情が反応する。

「はい、参ります。少々お待ち下さいませ…!」

庭の掃き掃除をしていた水柱邸の専属隠である清野(せいの)が、小走りで声の主を出迎えた。

「おはようございます、沢渡さん。任務の帰りですか? ご無事で何よりです。水柱様ならご在宅ですよ」

「おはようございます、突然の訪問申し訳ありません…!」

丁寧に応対する隠に申し訳なさそうな態度で頭を下げる七瀬。そこへ突然間の抜けた音が二人を包んだ。

あっ…と自分の腹部を慌てて隠す彼女を見ながら、清野は頭巾の下でふふっと含み笑いをする。

「すみません…昨日夕餉を食べ損ねてしまって…」

「頃合いが良いですね! 先程丁度朝餉の用意が出来た所ですよ」

「そ、そうなのですね…!いや、でも私はここへ朝食を食べに来たわけではなくて…」

にこやかに迎える清野に対し、七瀬は両手を胸の前で振り、更に申し訳なさそうな態度を見せた。

「沢渡」

「冨岡さん、おはようございます…!! あの、突然…申し訳ありません。私は決して朝食を食べに来た、わけでは…」

在宅と聞いてはいたが、まさか訪ねた本人が出て来るとは全く思わなかった七瀬。彼女は再びおろおろと慌てた様子になってしまう。

「別に構わない。俺もお前に聞きたい事がある」

「え?? それはどう言う…あ、行っちゃった…」

清野の後ろから突然現れた義勇は、それだけ言うと踵を返し、屋敷の中へ向かって行った。

ポカンと立ち尽くす七瀬に「どうぞ、中へ」と促す隠。

「ここに配属になって三ヶ月。ようやく主の言いたい事が把握出来るようになりました」

「…発する言葉が少ないですもんね」

「はい、その通りです」

ふふっと目尻を下げる隠の眼差しは呆れている物ではなく、ほんのりあたたかい。

七瀬は「ではお邪魔します」と清野に返答し、水柱邸へと入って行った。


/ 1003ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp