第70章 七支柱春药 〜弍〜 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
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「…」
「義勇、さん?」
己の白濁を七瀬の腹部から丁寧に拭き取った義勇は、それから間も無く横になり、無一郎の時と同様に眠りついてしまった。
汗で額の側の髪や首元の髪はまだ少し湿っているが、やがてこれも記憶と共になくなってしまうのだろう。
『私の兄弟子だからかな。他の柱の人達よりほんの少し近いから…これで終わりなのが残念、かも』
まだ三人目だ。情交を結ばないといけない柱は後四人いる。
『この順番できっと良いんだ…最後に冨岡さんだと多分上手く切り替えれないから』
部屋の掛け時計は午前二時半を指そうとしていた。
ふうと息を短くはいた七瀬は、重だるい体をゆっくりと起こし、汗や体液が付着している箇所を文机に置いてあるちり紙で可能な限り拭き取る。
多少の気持ち悪さはあるが、今は真夜中も真夜中。就寝中であろう清野を無理に起こすわけにもいかない。
水柱邸の主である義勇ならば可能だろうが、自分は彼の妹弟子とは言え、只の一般隊士である。
散らばった隊服を手繰り寄せ、ゆっくりと着用する七瀬は変わらず静かに寝ている義勇をちらりと見る。
鍛えているとは言え、体を冷やすのはあまり良くない。
そう考えた七瀬は情交前まで義勇が纏っていた浴衣を彼に何とか着せ、それから汚れていない布団を押し入れから出した。
柱ともなると少しの物音でも起きそうな物だが、義勇は全く目を覚まさない。
『冨岡さん、次会う時はまた兄弟子と妹弟子ですね。今夜はあなたの貴重な時間を私に下さって…ありがとうございました』
術の影響で義勇は起きないのだろうと察した七瀬だが、慎重に彼の体を動かして布団に寝かせた。
部屋を退室する前に義勇に一礼をし、彼女は静かに水柱邸を後にした。空に浮かんだ上弦の月は変わらずに眩い光を放ちながら、静かに浮かんだままだった。