第5章 第五章大きなワンコと変なおじさん
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
電池が切れてしまったように眠る零歌を見て安堵する。
出先で再会した時は驚いた。
少し見ない間に綺麗になっていて、雰囲気も大人びていた。
けれど、線が細くなって心配にもなった。
傍には綺麗な男の人が傍にいて、まるでお姫様を守るかのように零歌の前に立ちはだかった。
しかも聞けば、ご当地アイドルのプロデューサーを無所属でしていると聞き驚くも。
零歌ならとも思った。
社長が、零歌をスカウトしたいと言い出したのにも驚いたが何より驚いたのは零歌が本物のお嬢様だった事だ。
事情はそれとなく聞いて知っていたけど…
でも、茶道家本家と言われるあの家のお嬢様とは思わなかった。
零歌は家族と上手く行っておらず、才能がないと言われ家を出たと聞いている。
けれど、俺の目から見ても零歌は才能にあふれていた。
音楽のセンスは勿論だが、旧Re:valeの振り付けは全て彼女がしたものだし、作詞にいたっては千が嫉妬を抱く程だった。
歌にとって曲以上に評価が左右されるのは詩だ。
聴衆を勘当させる言葉を綴る事ができる零歌は間違いなく才能がある。
なのに自分に自信がない所や、控えめ過ぎた。
そんな所も好きだったんだけど。
「うーっ…」
「どうするんだこれ」
俺の膝で気持ちよさそうに寝ている零歌をそうすべきか。
スカウトの兼は速攻で断られたが、俺としてはここで関係を終わらせたくない。
勝手な言い分であるが、俺はあの時。
別れたくなかった。
けれど、負担を強いるような真似をしたくなかった。
今にして思えば、これ以上無い程傷つけると気づけなかったのは俺の落ち度だ。
それでも、九条の手から二人を開放したかったし。
千以上に零歌に執着している九条を危険だと感じたんだ。
だから…
俺は消えた。
でも、今になって少し後悔していている。
本当に勝手だけど