第1章 第一章始まりは雨の日に
冬を迎える少し前。
悲しい別れを経験した。
未来を信じ、大空に羽ばたく事を願った比翼の片方は消えてしまった。
残された方は歌う事にも絶望した。
誰よりも広い空に憧れ飛ぶ事を願っていた二人に大きな翼を付けて上げたかった。
でも、結局私は自分自身でも飛ぶことは出来なくて。
翼をもがれてしまった。
飛べない鳥はペンギンと同じ。
ただ空を見上げるだけでしかないのだと改めて思い知らされ。
私の世界は色を無くした。
そして愛する人までも失った私は心を殺した。
そして――。
「どうして万を止めてくれなかったんだ!」
「千…」
「恋人の癖に!肝心な時に役立たずで…それで良くプロデューサが務まるな!お前が…お前がいなくなればよかったんだ!」
「ユキさんやめてください!」
私が悪いのか。
責め立てる声が耳に直接入って来て私は何も言えなかった。
「お前なんか…お前なんかいなくなればいいんだ!」
イナクナレバイインダ。
オマエナンテヒツヨウナイ。
その言葉が私の心にグサッと突き刺さった。
「そうね…私なんて価値がないわね。私がいなければ良かった。いなくなるのが私であれば良かったのよね」
「レイさん!」
その後の事はよく覚えていなかった。
大雨が降る中ふらつきながら私は歩き続けた。
「ゲホッ…ゴホッ!」
体の弱い私は、気管支が弱かった。
そんな私に一緒に音楽をしようと言ってくれたのが彼だった。
でも、その彼がいない今。
私の翼は完全に折れてしまった。
だからこの世界から消えたい。
そう強く長いながら気づくと行きつけの神社に来ていた。
そして神社の前に倒れた私は、このまま死ぬんじゃないか。
そう思ったの。
でも神様は残酷すぎるほど優しかった。
死にたくても簡単に死なせてくれなかった。