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彼女の声よりもずっと

第84章 似た者同士


【山田ひざしside】


「ちょっといい加減にしてくれる?」



式の前から泣いている俺に香山先輩はそう言った。



「だって…詩ちゃんが相澤のもんになるなんて…」


「元々誰のものでもないでしょ?何言ってんのよ」






香山先輩はそう言って怪訝な顔をする。

今日は誰もがお洒落していて、香山先輩も深いブルーのドレスに身を包んでいた。





「そもそもあの二人に結婚式しろって言ったのはあなたじゃない」


「だって…詩ちゃん絶対ドレス似合うのにもったいないじゃないすか」






それを聞いて香山先輩は呆れた顔をする。





新郎側には数十人の参列者、
新婦側はたった一人。




それでも…
そこに座るボブの女性も、式が始まる前からズビズビと泣いていた。










「ほら、はじまるわよ」





その言葉に背筋を伸ばすと、会場の扉が開かれる。




音楽と共に歩いてくる二人はどこか緊張していて、
相澤なんか、すごく変な顔をしていた。






詩ちゃんがゆっくりと進むとドレスがキラキラと光る。
相澤も同じ色味のタキシードを着ていた。






ウエディングドレスに身を包む詩ちゃんは、息を飲むほど綺麗で…








ふと隣のテーブルにいる雄英の生徒たちがざわついていることに気が付く。





「すっごい綺麗」






ああ、そうだ綺麗だろう。



そんなことを思いながらひどく虚しくなった。








詩ちゃんのことが本当に好きだった。
絶対に相澤よりも先に恋をしていた。





一緒にいたかった。






だけど目の前にいる二人を見ればわかる。





俺が入り込む隙なんて少しもない。




互いに互いを愛していて、必要としている。

それくらい俺にも分かる。








それなら、俺にできることはひとつしかない。





心から好きだった女の子に、言えることはこれしかない。
















「お前らぜってーーー幸せになれよ!!!」







立ち上がってそう叫ぶと二人は俺に気付く、

そして、はにかみながら手を振ってくれた。





その笑顔が、よく似ている。









彼女の声よりもずっと END
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